お知らせ

オープン・エンド型投資法人の格付
2012.09.13
株式会社日本格付研究所(JCR)は、「J-REIT」の格付方法(2012年6月1日)を公表している。今般、JCRとして初めてオープン・エンド型投資法人の信用格付を付与するにあたって、従来の「J-REIT」の格付方法を踏襲し適用しているが、補足的な論点について本レポートを公表するものである。

1. 投資法人の類別
投資信託及び投資法人に関する法律(以下、「投信法」)に基づく投資法人には、オープン・エンド型とクローズド・エンド型に大別され、上場している投資法人(以下、「J-REIT」)は、クローズド・エンド型であることが東京証券取引所等の上場審査の条件であることからすべてクローズド・エンド型となっている。
両投資法人の大きな相違点は、オープン・エンド型では投資家の請求により投資口の払戻しが行われるが、クローズド・エンド型では投資口の払戻しが行われない反面、証券取引所に上場されることによって、投資資金の換金性(流動性)を確保している点である。一方で、オープン・エンド型投資法人は非上場であることから、換金については、一定の規定に基づく投資口の払戻し及び投資家間の相対の取引に限定されており、上場しているJ-REITと比べて投資口の流動性は劣る。
また、J-REITは、投資口価格(株価)が日々変動するが、オープン・エンド型投資法人では、投資口の基準価格を各決算期に不動産評価額をベースに算定することとされていることから、投資口価格は日々変動しない。
その他、オープン・エンド型投資法人とクローズド・エンド型投資法人の主な相違点は以下の通りである。

  オープン・エンド型投資法人
    根拠となる法律:投信法
    資金調達   :エクイティ(私募)、銀行借入
    主な投資家  :機関投資家等
    経営および運用における監督先:
            金融庁、投資主総会、監督役員

  クローズド・エンド型投資法人(上場の場合、本稿では「J-REIT」)
    根拠となる法律:投信法
    資金調達   :エクイティ(私募・公募)、銀行借入、投資法人債
    主な投資家  :個人を含む幅広い投資家
    経営および運用における監督先:
            金融庁、投資主総会、監督役員、証券取引所(J-REIT)

従来より、J-REITについては、株式としては、資本市場の変動の影響を強く受けることによって、投資口価格のボラティリティが高まり、結果として本来企図されていたミドルリスク・ミドルリターンという商品性が、投資家にとっては必ずしも十分に実現されてきていないことが指摘されてきた。一方で、私募ファンドについては、通常の場合には5年から7年程度の有期限の仕組みであるため、投資の期限における不動産市況によってそのパフォーマンスが大きく影響を受けてしまうという課題がある。
このような課題を踏まえて、オープン・エンド型投資法人は、J-REITや私募ファンドと異なる商品性をもち、特に長期の投資家のニーズを踏まえ、資本市場の影響を受けにくく、投資家にとって不動産投資本来のリスク要因以外を極力排除し、安定的かつ長期の投資を実現するための投資商品として企画されることが多いものと、JCRでは考えている。

2. オープン・エンド型投資法人の格付を付与するにあたって留意すべき点
① 投資主からの請求に基づく投資口の払戻し
前述のように、オープン・エンド型投資法人は投資主からの請求により投資口の払戻しが行われる仕組みであることから、借入金による払戻し資金の調達によってLTVの上昇を余儀なくされるリスクについても想定しておく必要がある。
J-REITと異なり、投資口の基準価格は不動産評価額をベースに算定されることからボラティリティは低いと考えられるものの、不動産市況の急速な下落等のイベントが発生し、基準価格の算定根拠となる不動産評価額等が大幅に下落する局面においては、本来長期保有を目的としていた投資家を対象としているといえども、想定以上の払戻し請求が行われる可能性も考えられる。従って、LTVの急激な上昇リスクを一定程度抑制するために、一定期間内における払戻し金額の上限を設定するなどの手当てが必要となろう。
また、投資主からの払戻し請求から実際に払戻しが実行されるまでの期間、比較的短期間での売却が可能な流動性が高い物件を確保しているか、こうした資産サイドの流動性確保に関する資産運用会社の取組状況や、スポンサーとの協業の実績や将来の実現可能性等をも踏まえて留意する必要がある。

② 不動産評価額の推移
前述のように、不動産市況の変調によって、不動産評価額が急速に下落することにより、投資家の払戻し請求が急増する可能性が高まり、また同時に時価ベースのLTVについても上昇するリスクがある。こうした点を考慮に入れると、通常のJ-REITでも同様ではあるものの、ポートフォリオの分散が効いていることがより望ましいものと考えられ、物件単位のみならず、立地、テナントや用途といった物件属性についても、分散効果によるキャッシュフローの安定性を享受可能かどうかなど、ポートフォリオとしての安定度をより注視する必要があるものと考えられる。

このように、オープン・エンド型投資法人については、資本市場の混乱・低迷により、上場J-REITにとってエクイティによる資金調達が困難な局面においても、各投資物件の不動産評価額をベースに計算される基準価格によって増資が可能な場合もあるなど、安定した運用が期待出来る反面、投資家にとっては資金回収に係る投資口売却や払戻し請求については、一定の制約が存在する。こうしたポイントを踏まえた、資産運用会社のポートフォリオ構築方針や、体制整備、及びLTVコントロールに関する対処方針には留意が必要と考えている。

(担当)杉山 成夫・秋山 高範
  
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