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デフォルト率推定モデル
2001.12.01
デフォルト率推定モデル
Q.JCRで利用しているデフォルト率推定モデルとはどのようなものですか。

A.JCRでは財務データを入力データとして、その企業が将来のある一定期間内に倒産に至る確率を推定する信用リスク推定モデルを開発して、一般事業会社の格付け評価に利用しています。

この信用リスク推定モデルは、上場・店頭公開企業の製造業と、商社、鉄道、航空運輸、電気・ガスを除く非製造業を対象に作成されています。

製造業、非製造業別の信用リスク推定モデルに財務データを入力して、1年以内から5年以内の各期間内にデフォルトする確率を推定します。

このモデルは、倒産企業と債務超過企業をデフォルトサンプルとして、それらのデフォルト企業と正常企業との判別を行う判別式を作成し、その算出値(Z値)を変換してデフォルト率を推定しています(図1参照)。


判別式は製造業、非製造業の各推定期間ごとに、それぞれ4から9個の財務指標が採用されています。その採用された主な財務指標には自己資本比率、売上債権回転期間、減価償却費、キャッシュフロー、債務保証額などがあります。


Q.そのモデルのパフォーマンスはどのようなものですか。

A.このモデルにより、どのように倒産企業の5年以内推定倒産確率が変化していくのか、1993年4月から2001年9月までに倒産した上場・店頭公開企業51 社と、特にその中で民事再生法の適用を受けて倒産した上場・店頭公開企業14社を対象にその推移を見てみます(図2参照)。

図のx軸は期間を表し、-1、-2などの目盛りはそれぞれ倒産1期前(直前期)、倒産2期前を示します。

またy軸は5年以内推定倒産確率の中央値を表します。

この図のグラフを見ると、倒産企業の倒産8期前の財務指標を入力データとして5年以内の推定倒産確率を求めると、その中央値は、上場・店頭公開倒産企業、民事再生法適用企業についてそれぞれ1.61%、1.74%ですが、倒産2期前ではそれぞれ2.23%、2.22%、倒産1期前では2.52%、 2.97%と上昇しているのが分かります。

また、格付け上の投資適格カテゴリーと投機的カテゴリーが信用リスク推定モデルからどのように判定されるかを見ると、上場・店頭公開倒産企業、民事再生法適用企業のうち倒産2期前ではそれぞれ42件81%、12件86%が格付け上の投機的カテゴリーにあり、倒産1期前では46件90%、14件100%が投機的カテゴリーにあると推測されます。

これから、財務指標を入力データとするこの信用リスク推定モデルが、倒産を予測するのに役立つことが分かります。

このように、企業の財務データを入力情報とする信用リスク推定モデルによる倒産予測は、企業によってばらつきはあるものの、十分に有効であると考えられます。

さらに最近の会計制度の改正を反映して財務情報がその内容と公開のタイミングの両点で改善をみつつあることを考慮すれば、財務情報による倒産予測モデルは一層大きな役割を担うことが期待されます。□