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JCR、中小企業倒産推定モデルのセミナー報告
2002.07.02
JCR、中小企業倒産推定モデルのセミナー報告

2002年7月12日

=金融工学の権威、今野・中央大教授が講演=

 日本格付研究所(JCR)は9日、東京・大手町の経団連会館で数理計画法の世界的権威である今野浩・中央大学教授(前東京工業大学大学院教授)の支援を得て開発した中小企業信用リスク推定モデル「JCREST」のセミナーを開催した。銀行、証券、損保、シンクタンクなどからの出席者が110人以上収容する会場を埋め尽くす盛況で、同モデルへの関心は強かった。

 席上、今野教授が「半正定値ロジット・モデルによる倒産確率推計と倒産判別」をテーマに約40分間講演。この中で同教授は倒産予測研究は金融工学の新しい分野と位置づけるとともに、倒産予測モデルの中でこのモデルが「数千社、数万社の財務データを基に検証したところ、もっとも早い結果を出すことが分かった」と紹介。そのうえで3,4年前からより一層の改良を進めた結果、倒産予測精度の高度化と計算時間の短縮化を実現。今回、JCRが商用化したリスク推定モデルの開発につながったとこれまでの経緯について解説した。

 さらに同教授は①倒産確率の精度の現状②大量データ処理能力の向上-について展望した。教授は具体的な倒産確率の予測精度について「85ないし86パーセントがバウンド(上限)だろう」と述べ、「(現状から)さらに数パーセント精度を上げたいが、1パーセントでもかなりシグニフィカント(注目すべき)だ」と語った。一方、データ処理能力については「10年以内には10万企業の(財務データなどの)変数が30分ぐらいで解ける時代がくるだろう」と予想、金融工学における産学協同の観点からも倒産リスク推定モデル商用化の意義は大きいと強調し講演を締めくくった。

 このあと、JCRは上記モデルに財務データを使って行ったテスト結果を公表した。

それによると、直近2期の財務データを使用し1年以内に倒産する確率を試算したところ、倒産(非倒産)を予測して実際に倒産(非倒産)した全体の割合が建設業で81.00、製造業で84.74、卸・小売・飲食業で82.81パーセントとなっている。この数字は今野教授が指摘した倒産確率の予測精度の上限に極めて近く、同モデルの完成度の高さを実証している。

 JCRは今回、低迷する中小企業金融の活性化に資する目的で中小企業の信用リスクモデルを開発した。シンプルで使い勝手がいいなど、貸し手ばかりでなく借り手などのモデル利用にも配慮されている。東京商工リサーチの大規模データベース(1万数千社)

から財務指標の提供を受けるが、建設、製造、卸・小売・飲食の3業種が同データベースの9割以上を占めており、事実上全国の中小企業をカバーする形になっている。(了) 

参考:中小企業信用リスク推定モデルの開発について(2002年6月21日ニュースリリース)

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