お知らせ

JCR格付け推移マトリックス
2004.02.01
格付け推移マトリックスとは

Q.格付け推移マトリックスとはどのようなものですか?

A.債券の格付けは、年1回、または信用力に影響するイベント発生時に見直しが行われ、その時点における発行体の信用力に応じて格付けの引き上げ、維持または引き下げのいずれかの措置がとられます。

JCRでは、このような格付けの変化に関する情報を格付け推移マトリックス(行列)として公表しています。

格付け推移マトリックスとは、現在の格付けがn年後にどのような格付けに変化するのかを過去の格付け推移データを用いて、確率的な形式(百分比の形)で表現したものです。

例えば、1年後の格付け変化について作成したものが下表です(本表はJCR月報2001年1月号掲載のものです)。この表の格付け推移マトリックスでは、1991年1月から2000年10月までにJCRが公表した居住者格付けを対象データとしています。

その具体的な作成方法を説明しますと、まず対象となる居住者格付けについて上記10年間の各月末ごとに、その時点の格付けをカテゴリーごとに縦軸(列)に、また1年後の格付けを同じくカテゴリごとに横軸(行)にとったマトリックス形式の度数分布表を作成します。

次に、こうして作成したすべての表のデータを格付けカテゴリーごとに単純に加算したうえで、各行ごとのデータ総数で除して百分比の形で表します。

このように1年後の格付け変化について作成された格付けマトリックスは、JCRの過去10年間の格付け実績を用いているので、モデルなどによる推定値と異なり実績に忠実な数値が得られるとともに、一時的・突発的な事象にとらわれない安定的な関係を示すことができるメリットがあります。

なお、格付け推移マトリックスを行列の乗法の公式に基づいてn回かけることにより、n年間における擬似的な格付け推移マトリックスが得られます。

しかし、一般的にnが大きくなるほど、同じ格付けにとどまる確率が小さくなること、つまりより格付けが変わりやすくなるリスクが大きくなる傾向にあります。

1年間について作成した格付け推移マトリックスをn乗することにより得られる擬似的な推移確率は、n年間について上記で述べた方法により作成した実際の格付け推移マトリックスの数値と比べると、より高格付け、またはより低格付けに推移する確率が大きくなる傾向があります。



Q.格付け推移マトリックスからどんなことがわかりますか?

A.まず、現時点での格付けレベルによって将来の格付けレベルを推定することが可能となります。

例えば、下表の格付け推移マトリックスから、現在JCRの格付けでA格である債券が1年後にA格にとどまる確率は84.23%、AA-格に上がる確率は0.08%、BBB+格に下がる確率は1.12%と読み取れます。

さらにこのように読み取ることにより、どの格付けにおいても1年後も同じ格付けである確率が大きいことがわかります(表の網掛部分参照)。

また、低格付けであるほど、同じ格付けにとどまらずに1年後に格上げ、または格下げされる確率が高いこと、従って格付けの相対的に低い企業の信用力が格付けの高い企業の信用力より安定性に欠けることがわかります。


格付け推移マトリックスは、こうした読み取り方をすることにより投資家が保有している債券についてどの程度格付けの変化するリスクにさらされているかを知る目安となります。

逆に、リスクの上限が定められている場合には、格付け推移マトリックスを参照することによって、リスクに見合った格付けを持つ債券を選ぶこともできます。□

PDF